文化事業

明神能の歴史を知りたい その1

明神能の歴史を知りたい その1
平成15年より始まった神田明神薪能 明神能・幽玄の花。金剛流・遠藤勝實氏を中心に毎回分かりやすい演目が演じられています。
明神能は、平成25年で11回目となります。そこで、24年までの明神能の歴史を振り返ります。

明神能を演じる「金剛流」とは

金剛流は能楽シテ方五流派のひとつで、古くは奈良の法隆寺に奉仕した猿楽座の坂戸座を源流とし、室町初期には春日興福寺に勤仕する大和猿楽四座のひとつとなり、のちに金剛座、そして現在の金剛流へと至りました。金剛流の芸風は、豪快でめざましい動きの中にも、華麗・優美さがあり、「舞金剛(まいこんごう)」といわれます。また、豊臣秀吉拝領の「雪の小面」や艶麗な「孫次郎」など、所蔵する能面・能装束に名品が多いことでも知られ「面金剛(おもてこんごう)」とも言われています。五流のうち四流の宗家が東京を本拠地にしている中で、関西に宗家が在住する唯一の流儀です。

第1回 能「羽衣」 仕舞「嵐山」

第1回 能「羽衣」 仕舞「嵐山」
【日時】 平成15年5月14日(火)午後6時開演
【番組】
解説 三浦裕子(武蔵野大学講師)
雅楽・巫女舞(神田明神雅楽部)
火入れ式
仕舞「嵐山」(豊嶋訓三)
能「羽衣」(シテ(夫人) 遠藤勝實)

三保の松原の漁師伯竜(ワキ)は、羽衣を見つけ、持ち帰ろうとするが、天人(シテ)の悲嘆を見兼ねて返す。その礼として天人は月宮殿の舞楽を披露し、東遊びの舞曲を舞いながら昇天する。日本一の名所である霊峰富士の麓・白砂青松の砂浜を舞台に、羽衣伝説を舞台化したもの。羽衣を返せば舞を見せず飛び去るのではないかとの伯竜の疑念に「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と答える天人の言葉に、この能の清浄無垢の美質が象徴されている。ちなみに神田祭に出される神田松枝町会の山車は「羽衣」人形の山車で、「羽衣」を「松の枝」にひっかけた洒落のきいた山車である、五月十三日に神社に宮入する。

第2回 能「葵上」 狂言「仏師」

第2回 能「葵上」 狂言「仏師」
【日時】 平成16年5月13日(木)午後6時20分開演
【番組】
解説 三浦裕子(武蔵野大学講師)
雅楽・巫女舞(神田明神雅楽部)
火入れ式
仕舞「竹生島」(片山峯秀)
仕舞「笠之段」(山田純夫)
狂言「仏師」(和泉流)(シテ(すっぱ) 深田博治)
能「葵上」(金剛流)(シテ(六条御息所の生霊) 遠藤勝實)

朱雀院の臣下(ワキツレ)が出て、左大臣の息女・葵上に取り憑いた怨霊を呼び出すよう照日の神子に依頼する。呼び出されたのは破れ車に乗った上臈姿の六条御息所の生霊(前シテ)で、光源氏の愛が去った恨みをかこち、病床にある葵上を打ちすえ、連れ去ろうとする。そこに横川の小聖(ワキ)が招かれ、鬼女と化し葵上に襲いかかろうとする御息所に対し、不動明王を祈る加持を行い、恨みを和らげ成仏させる。「源氏物語」葵を題材としたもの。

第3回 能「土蜘蛛」 狂言「附子(ぶす)」

第3回 能「土蜘蛛」 狂言「附子(ぶす)」
【日時】 平成17年5月16日(月)午後6時20分開演
【番組】
解説 三浦裕子(武蔵野大学講師)
雅楽・巫女舞(神田明神雅楽部)
火入れ式
仕舞「笠之段」(豊嶋訓三)
半能「加茂」(シテ(別雷神) 遠藤勝實)
狂言「附子(ぶす)」(シテ(太郎冠者) 山本泰次郎)
能「土蜘蛛」(シテ(僧・後ニ土蜘蛛ノ精) 片山峯秀)

病臥の源頼光(ツレ)のもとへ、近侍の女胡蝶(ツレ)が薬を持って見舞いに来る。胡蝶は気弱になった頼光を励まし帰る。ある夜、病状の思わしくない頼光の枕元に怪しい僧(前シテ)が現れ、千筋の糸を投げかける。そこで頼光が枕元に置く名刀藤丸で斬りつけると、なおも糸を繰り出し消えうせる。そこへ一人の武者が駆けつけ、子細を聞いて葛城山へ化生退治に出かける。すると鬼神姿の土蜘蛛の精(後シテ)が現れ、千筋の糸を投げかけて応戦するが、ついに武者に切り伏せられる。「平家物語」剣ノ巻を題材にしたもの。

第4回 能「黒塚」 狂言「魚説法(うおせっぽう)」

第4回 能「黒塚」 狂言「魚説法(うおせっぽう)」
【日時】 平成18年5月16日(火)午後6時20分開演
【番組】
解説 三浦裕子(武蔵野大学講師)
雅楽・巫女舞(神田明神雅楽部)
火入れ式
狂言「魚説法(うおせっぽう)」(シテ(新発意) 深田博治)
仕舞「邯鄲(かんたん)」(片山峯秀)
能「黒塚」(シテ(里の老女・後に鬼女) 遠藤勝實)

熊野山伏の祐慶(ワキ)行は、旅の途中、日暮れて奥州安達が原にさしかかり、ある老女(前シテ)の所に宿る。老女は糸車を回してみせながら、わが身を嘆く。また糸尽くしの歌を歌ったりする。そして夜が更けて寒さが増すと、薪を採りに出ようとし、その間寝室をのぞかぬよう念を押す。供の能力(アイ)が誘惑に耐えられず寝室をのぞくと、人間の死骸が散乱している。一行は鬼女の住む黒塚と知り、急いで逃げる。やがてそれを知った鬼女(後シテ)が追いかけて来るが、祐慶が祈って追い払う。「拾遺集」雑下などの黒塚伝説を題材としたもの。