令和元年五月に「天皇陛下御即位奉祝記念」として盛大に斎行された神田祭ですが、それから四年間、新型コロナウイルス感染症の流行により、やむなく中断を余儀なくされてきました。
そしてこの間、私たちは未知の感染症に対する恐怖と不安のために、閉塞せざるを得ず、人と人の間には孤立と分断が進み、その結果として誤解や無理解が蔓延して、残念ながら対立と抗争が数多く生じる社会へと変化してきました。
私たちは、今年の神田祭の復活を契機にして、心に寛容と柔軟性を取り戻して、お互いを認め合い、信じ合い、助け合うことができる共生の社会を一日も早く再構築していきたいと思います。
失われた令和の四年間を取り戻すために、いまこそ神田祭の復活が求められています。
神田祭こそが、人と人を結び繋げて、地域社会を活性化させて、皆が生きる喜びを共有することができる地域資源であり「祭りの力」は人々に伝統への誇りと勇気と感動を与えてくれるかけがえのない歴史文化でもあります。
いま流行りのオンラインでは、決して神田祭を代替することはできません。
神田祭は伝統を守りながら、新しい祭礼文化の創造に挑戦するために、常若の心を体現しながら「変わらないために変わり続けていきたい」と願います。
かつて芭蕉翁が〝 古人の跡を求めず、古人の求めしところを求めよ 〟と語った精神に帰一するように、多くの危機を乗り越えてきた長い神社の歴史の中にこそ、持続可能な社会を構築するための大きなヒントも秘められているのではないかと考えます。
神田神社は、創建千三百年記念事業を進めながら今年の「新しい歴史の幕開けとなる祭礼」を奉仕してまいります。
どうか氏子崇敬者皆様の格別のご理解とご協力をお願い申し上げます。